急須で入れたようななにか

記事サムネイル

ほぼ日帰りで行く南国「八丈島」

2024年5月4日

19 分くらいで読めます!

金曜日夜、夜ご飯とお風呂を済ませて列車に乗って、浜松町駅で降りた。

竹芝客船ターミナル

浜松町より少し歩いて竹芝客船ターミナルへ向かう。

竹芝客船ターミナルの夜は、船のマストが光ってわかりやすい。

22:30発の三宅島、御蔵島、八丈島行きの船に乗る。

八丈島は東京から南へ287kmのところにある伊豆諸島の1つである。

ゴールデンウィークともあって、さすがに人が多い。

乗船。本日の寝床は橘丸。

「東京竹芝」22:30→東海汽船 橘丸→8:55「八丈島底土」

客室は一番安い2等和室を選んだ。
和室とあると畳の個室をイメージしそうだが、いわゆる快適版奴隷貿易船スタイルである。

この1区間が割り与えられ、10時間の船旅が始まる。
インターネット割引を効かせた八丈島までの2等和室運賃は10110円。

予め腹ごしらえを済ませていたが、少しお腹も空くので船内レストランへ向かうことにした。

色々揃っているが、その中でも異彩を放つ200円の「ご飯スープセット」を選んだ。
200円という娑婆でも破格の値段である。

あまりにも想像通りのものが出てきた。

窓から見えるレインボーブリッジを肴に夜ご飯を食べる。
早々と食べ終え、甲板に上がって都会の夜景を楽しむことにした。

大島航路でも見たので個人的に2度目だが、竹芝を往来する夜のフェリーからの眺めが絶景であることに間違いはない。

これをクルーズ船や豪華客船でなく公共交通で見られる、いわば日常の一部であることが良い。


さて、船旅は10時間もあるので寝床の改善に挑むことにした。
毛布をレンタルする。

ここで贅沢に2枚レンタルするのがミソである。
そして1枚を敷き布団代わり、もう1枚を掛け布団代わりにする。
(※かなり枚数に余裕があるようなので、1人で2枚使っても他の人に迷惑掛かりません)

これで簡易的な布団の完成である。

さらに着ていたパーカーを枕の弾力材にし、アイマスク、耳栓代わりのイヤホン、飲み物を横に装備すれば完全な住処となる。

あとは寝るだけ。


折角なので寝る前に船を探索する。
22:30出港で23:30消灯なので意外に時間がない。

フロントには天気図や海況が掲載されていて、ワクワクする。

予め入浴は済ませたので使わなかったが、船内にはシャワーもある。
商船三井のさんふらわあ(大洗→苫小牧)は湯船とサウナがあったので、そこと比べると最低限感が否めないが……航海時間も距離も違うので比較するのは違う。

レストランの営業時間は限られるので、常時販売されている自販機のラインナップも確認しておきたい。

食べ物系は冷凍食品の自販機の他、お菓子やカップ麺、アイスを扱う自販機が存在する。

スイーツ専用の自販機まである。ぜひとも職場に置いていただきたい。

飲み物は一般的なお茶やジュースに加えて、アルコールもあって申し分ない。

折角なのでアイスを買って食べることにした。

いい感じに玉ボケ写真が取れる

肌寒さを感じつつ甲板で食べる。

うまい。
ちょうど羽田空港近海を通過している時だったので飛行機も間近で見れた。

普段見れない方向から首都圏を一望できるのも船の醍醐味の一つ。

夜になると一部エリアは立入禁止になる。
23:30以降は翌朝まで完全に甲板に出られなくなるので早めに楽しむことをおすすめする。

夜が更けてきたので、寝床に着く。

いい感じ。床は確かに硬いが、このくらいの硬さが気持ち良い。
寝台特急サンライズ出雲・瀬戸号のノビノビ座席と完全に同じ質感。

この2等和室は奴隷貿易船と揶揄されがちだが、比較的快適である。全然寝れる。
隣に人が居なければの話だが……

欠点は鉄の塊の船内なので完全に携帯回線が遮断されること。
本土や大島近海から離れると甲板でも電波は届かないが、この部屋はどこに居ても電波が届かない。
Twitterどころか、阿部寛のホームページすらも見れない。

23:30の消灯後はかなり暗くなったが、廊下の常夜灯など一部は残る。
さらに近くの人の物音やエンジンの音もあり、寝るに寝付けない。

そして24:00からはどうしてもやらないといけないことがあった。帰りの飛行機の予約である。
「スマートU25」と呼ばれる25歳以下が使えるANAの当日割引を狙っていた。
明日帰れるかが掛かっているので、ここが正念場といったところだ。

携帯回線の海上エリア外でも東海汽船の船ではStarlinkを用いた衛星回線経由のWi-Fiが使える。

このWi-Fiに接続するために夜な夜な船のロビーに足を運び、酒が入って談笑しているおじさま方の横でANAの予約サイトにアクセスした。

残り3席だったが無事航空券を確保でき、島から帰れることになった。
一安心して、2等和室に帰還し寝床に伏した。

エンジンの揺れと音が気になりつつも船特有の重力を感じる揺れが少なく快適だった。
そもそも5月の波の穏やかな日であり、揺れるはずもない。
……そう思っていた自分がにくい。

時間が経つに連れ、だんだん揺れがひどくなっていく。
どうやら揺れの原因は黒潮らしい。
黒潮は古来より人類と呉越同舟である。
豊かな漁場をもたらす一方、逆らう船には容赦なく、本土文化と八丈島を隔離してきた。
今晩も黒潮は5681トンの鉄の塊を容赦なく揺らしてくる。
しかしこの揺れも良い思い出なのかもしれないと思い始めた。
旅の思い出として、これほど体に植え付けられるものはない。

いや、さすがに酔うなこれ……
船旅を選んだ自分に自己嫌悪しながら、酔い止めを服用して睡眠を試みた。

睡眠と覚醒の狭間を彷徨い続けて数時間、爆音の船内アナウンスと照明点灯で目が覚めた。
最初の寄港地、三宅島に着くらしい。

眠たい眼をこすりつつ、折角なので甲板に出てて島を拝むことにした。

彼は誰時の中、三宅島が姿を現してた。

甲板でぼーっとしている間に、船は港へ着岸していた。

ぞろぞろと人が降りていき、相部屋だった住人も半分以上下船した。

時刻はまだ4時台である。
2等和室に戻って、二度寝を試みることにした。


次に目が覚めた時には、2つ目の寄港地「御蔵島」を通り過ぎ、もう日も昇っていた。

甲板で朝ご飯を食べることにした。

リュックの中で潰れたような見た目のパンだが、最初から潰れているパンであることに留意されたい。

海を眺めていたら、イルカの群れに遭遇した。

野生のイルカを初めて見た。
ほんの一瞬だったが、自然を感じる貴重な機会だった。

八丈島がくっきり見えるほど近づいてきた。
荷物をまとめて下船の準備をする。
今晩には家に帰るので荷物はリュック1つに収まる。

八丈島、底土港に上陸した。

改めて外から見ると、なかなか大きい船であった。

底土港→徒歩→護神バス停

八丈島には町営バスが走っている。
しかし本数が少ない上、Googleマップで出てこないという致命的な問題を抱えている。(離島とはいえ、伊豆大島でも与那国島でもバスはGoogleマップの案内に出てくるのが通例であるため、これは特筆すべき問題である)
さらに到着した港から、次の目的地へ向かうバスが通る最寄りのバス停まで徒歩20分も要する。

島内にはレンタカーがあるが、私は生粋のペーパードライバーなのでこの選択はできない。
電動チャリを備えるレンタサイクルもあり、一見これが良さそうに思えたのだが、温泉までの坂道の多さに現実的でなく断念した。

結果として、町営バスと自らの足でこの島を攻略することにした。
徒歩だと、道中をゆっくり楽しむことができる。
南の島は花がたくさん見られて楽しい。

道端のお花
ランタナも見られてテンション爆上がり

普通の道もどことなく南国を感じさせる作りであった。

存在しない夏の思い出が蘇りそうだった。

半袖でも汗をかきながら、バス停に辿り着いた。

思ったよりも早くバス停に着いたので、近くの神社を参詣することにした。

それでもバスが来るまで時間が余ったので、歩道を歩く野良猫を追いかけたりした。

猫は私有地に入るという人類には不可能なバリューを発揮して逃げた。

……バスが定刻になっても来ないので読書をして過ごした。

今回の旅のお供はテッド・チャンの「息吹」。現代SFである。

「護神」9:34→町営バス→10:11「末吉温泉」

さすがにゴールデンウィークともあって、都会の通勤ラッシュからワープしたかのような混雑のバスが来た。

バスに揺られながら末吉温泉まで向かう。

東京都内でありながら、八丈島の町営バスではSuicaなどの交通系ICカードが使えない。
今回の旅では「BU・S・PA(バスパ)」と呼ばれる町営バス乗り放題と温泉入り放題がセットになったフリーパスを使った。
2日間有効で1000円だが、温泉までの片道バス代だけでも540円なので十分にお得である。

車窓を眺めながら、この坂をチャリで登ろうと考えていたのはあまりにも無謀だったと感じた。

八丈島の平野部が一望できた。
トリスタンダクーニャ諸島を彷彿とさせるような、まばらな建物の並びが良い。

バスは自然の中をしばらく進んで、末吉温泉で下車した。

末吉温泉 みはらしの湯

バスが少し遅れてちょうど10:30の営業開始時間に末吉温泉 みはらしの湯に着いた。

浴室内は撮影禁止のため、温泉にありがちな座ってくつろげるスペースからの写真を示す。

温泉からは太平洋を一望できた。
昨日の夜までコンクリートジャングルに居たのが嘘のように感じられた。

温泉は含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉で最高だった。
全身がぽかぽかして、疲労回復感もすごい。
新卒研修で疲弊した心と体を癒やしてくれた。

「末吉温泉」11:03→町営バス→11:13「中田商店前」

末吉温泉を後に、次は別の温泉に向かう。
次に降りたのは中田商店前。
ここから徒歩20分くらいのところに中之郷温泉と呼ばれる温泉がある。

丁度お昼時なので、バス停前の商店で軽食と飲み物を買うことにした。

買い物を済ませて温泉に向かう。

温泉までの道のりはずっと下り坂で、戻ってくるの大変だという気持ちがどんどん強くなった。

ハイビスカスが道端に生えており、南国を感じさせる。

途中、裏見ヶ滝という滝があるらしく、見に行くことにした。

裏見ヶ滝

鬱蒼とした山道の中に裏見ヶ滝はあるらしい。

虫とも遭遇しながら滝へ向かった。

滝に着いたが、水量が少なく、言われないと気付かない状態になっていた。

よく見ればチョロチョロと流れている。

我が家の壊れかけの蛇口のほうが水量多い気がする。

ちなみにこの滝の近くに混浴の温泉があるのだが、水着を持ってきていないので断念した。

滝を後にして、南国の道を歩きながら温泉に向かう。

喉が渇いたので、商店で買ったファンタを飲みながら進む。

絶対徒歩で来るところじゃない。車がほしい。と思った。

自分以外誰も歩いていない上、車通りすら少ない。
この世界に自分しか居なくなったのかと錯覚するほどだった。

しばらくして、やっと海が見えてきた。

お腹が空いたので、温泉より先にお昼を食べることにした。

藍ヶ江港

さきほど商店で買った寿司を港の土手で食べる。

折角なので奮発して八丈島名物の島寿司を購入した。

海も寿司も輝いていた。

大変に美味ではあったが、からしが強く、大粒の涙を流しながら完食した。
(※八丈島ではかつてワサビの入手性が悪かったため、寿司にからしを入れる文化がある)

足湯きらめき

港近くの、誰でも入れる足湯に浸かった。

熱い足湯であった。
隣で学生と思わしき男女がいい雰囲気になっていて、ちょっと気まずかった。

あと、クジラは見えなかった。残念。

中之郷温泉 やすらぎの湯

先程の足湯と同じ源泉だが、浴槽を備える中之郷温泉 やすらぎの湯にも浸かる。

例によってお風呂からの景色は載せられない。
末吉温泉とは異なるナトリウム-塩化物温泉の湯だった。
さすが活火山の島ともあって温泉が豊富である。

次のバスの時間が迫っていたため、カラスの行水のごとく退散し、早足で来た道を戻った。

「中田商店前」12:58→町営バス→13:15「裁判所前」

行きに通った道を戻る。
行きも見た景色だが、このロケーションはたまらなく良い。

左に見える八丈小島はかつて有人島であった。
風土病との戦いや集団離島の歴史があり、なかなか感慨深い。

「裁判所」バス停で降り、付近を散策した。

Can★Do

離島にコンビニがある事例は礼文島をはじめいくつかあるが、八丈島にコンビニはない。
しかし100均チェーンの1つ、Can★Doがあった。

八丈富士の下に聳えるCan★Do

明らかに異質な存在であった。
離島だと高くなりがちな食料品まで本土と同じ100円で販売されていた。

スーパー

お昼が少なめだったため、間食を買いにスーパーへ立ち寄った。

コーヒーと、謎の甘々クロワッサンを買った。

離島の野菜はやはり高いなと考えながら、苺パイクロワッサンを頬張った。

八丈島歴史民俗資料館

近くに資料館があったので立ち寄った。

先史時代からこの島に人間が居たらしい。
現代技術でも大揺れ不可避の黒潮を乗り越えて八丈島に辿り着いた人類、あまりにも偉大すぎる。

八丈語は本土の4種類の方言の1つとして独立した方言らしい。
しかも万葉集の東国方言が現代に残っているらしく、なかなかおもしろい。

島の古代文化としても、関東圏からだけでなく、黒潮の上流から来た可能性が示唆されており、なかなか面白い。

資料館を後にして、徒歩で八丈植物公園へ向かう。

ゴールデンウィークとは思えない、のどかでゆったりとした時間が流れる。

八丈島では珍しく、天気が良い。
常春と呼ばれる島であるが、普通に暑い。

八丈植物公園

八条植物公園に着いた。

誰も居ない道を歩くのは良い気分転換になる。
ゴールデンウィークにこんな体験ができるとは思っていなかった。

そして八丈植物公園にはキョンが飼育されているらしい。

小さくてかわいい。

鳥もたくさん居たが、すばしっこくて写真は撮れなかった。

とても綺麗な自然でリフレッシュできた。
本土と違い熊も生息していないため、安心して過ごせる。

八丈島ビジターセンター

公園内にある八丈島ビジターセンターに訪れた。

ここのジェラートは評判が良いらしく、明日葉味を頼んでみた。

美味であった。

近くの植物園には南の島の植物も多数展示されていた。

徒歩→八丈島空港

飛行機の時間も迫って来たので、空港へ向かった。

徒歩で空港まで行く人はいないらしく、またしても道を独り占めして歩く。

文明が滅んだ世界に取り残された気分になった。

道中はアロエが自生していたり、お花が咲いていたり、南国の気分を味わえて楽しい。

少し時間に余裕があったので、上から空港を眺めたりした。

絶海の孤島という感じがする。

また野良猫に出会ったが、柵の向こうに逃げられた。ずるい。

イタチも居たが、すぐ逃げられた。動物に好かれない体質かもしれない。

いつか八丈富士にも登ってみたい。

コテンラジオを聞きながら、くねくねの道路を歩いて、空港に向かった。

「八丈島空港」17:25→ANA 飛行機→18:25「羽田空港」

飛行機は窓側の席を確保した。

しかし、窓がなかった。建築技師の栗原さんもびっくりである。
どうやらB747は10Aないし11Aあたりが窓無い席になるらしい。

前後の席の窓から景色を垣間見ることになり、平安貴族の求婚を彷彿とさせた。

飛行機は一瞬にして八丈島を後にした。

東京羽田までは60分と短いフライトであり、飲み物はりんごジュース限定になっていた。石垣→与那国のような、より短い距離では飲み物の提供がないので、この中間的なスタイルは面白い。

行きは10時間かかった本土までの移動も帰りは1時間と一瞬であった。

誰そ彼時に羽田空港に着陸した。

昨晩22:30に出発してから、まだ24時間も経っていない。

おわり

明日は日曜日。

おまけ

大まかな工程

時間 内容
5/3(金) 22:30→5/4(土) 8:55 夜行フェリー 東京竹芝→八丈島底土
5/4(土) 8:55→17:25 八丈島滞在
5/4(土) 17:25→18:25 飛行機 八丈島→羽田

費用内訳

費用 内訳
¥10110 東海汽船 2等和室 東京竹芝→八丈島底土 (インターネット割引適応)
¥200 東海汽船 貸毛布2枚
¥1000 八丈島 2日間バス乗り放題・温泉入り放題「BU・S・PA(バスパ)」
¥14770 ANA 八丈島→羽田 (繁忙期価格、スマートU25適応)
¥100 八丈島歴史民俗資料館
計:¥26180 (食費除く)